矯正治療で歯が動くことはすでにご存知のことと思います。ではどうして歯が動くのか知っていますか?
人間の歯は有根歯といって根を持っており、硬いあごの骨に歯根膜という膜を介して植わっています。この歯根膜は食べ物をかむときにクッションの役目をする以外にも大事な働きをしています。例えば、食事の時にはいろいろな硬さの物をかみますが、その際無意識にかむ力を調整したりもしています。これは歯根膜の中にあるセンサーが瞬時に食べ物の硬さを脳に伝え、脳からかむ力をどのくらいにするか指令が出されることにより、強い咬合力(こうごうりょく:かむ力)で自分の歯やあごの骨が壊されることのないようにしているのです。
実は、この歯根膜が歯の移動にとても重要な働きをしています。歯の一方から矯正力を加えると、力を加えられた側の歯根膜が根によって圧迫され、そこに隣接した骨には骨を溶かす細胞が現れます。また、その反対側の歯根膜は根に引っ張られることになり、そこに隣接した骨には骨を造る細胞が現れます。このようにして根の周りの骨が、改造を繰り返すことにより、徐々に歯を移動させることができるのです。この際、必要とされる矯正力は100gほどのとても弱い力です。よく「歯を早く動かしたいので強い力をかけてほしい」などと言われますが、不適切な強い力は歯根膜を変性させてしまい、歯が動かなくなってしまうこともあるのです。