近年、軟らかいものを食べる機会が増えるなど、食生活の変化から、子供のあごが小さくなってきたといわれています。また、日本人の頭形は、室町時代以降、上から見た時に前後に短く、左右に広くなる短頭化現象がしばらく続いてきたのが、最近では、前後に長く、左右に狭くなる長頭化傾向にあるそうです。このことは、歯列の横幅が狭く、でこぼこの歯並びの子供が多いことと関係しているかもしれません。
歯並びの矯正治療は、あごの成長発育が完了している患者さんには、全部の歯にブラケットという装置を付けて矯正するマルチブラケット治療を行うのが一般的です。一方、成長途中にある子供の患者さんでは、治療を2段階に分け、まず上下のあごの成長バランスを整えたり、永久歯にはえかわる際のスペースを管理し、その後、あごの成長が止まってから、マルチブラケット装置による矯正治療を行います。そうすることによっていくつかの利点があるからです。例えば出っ歯の人では、上あごの成長を抑制したり、下あごの成長を促進させることで、将来的にパランスのとれたきれいな横顔が得られます。また、乳歯が虫歯などで早期に喪失した場合などには、保隙(ほげき)装置でそのスペースを確保したり、場合によっては歯列を拡大することにより、乳歯から永久歯へとスムーズに交換できるようになります。その結果、2段階で行うマルチブラケット治療の際に、歯を抜かないで永久歯をきれいに並べられる確率がぐんと高まります。人によっては、マルチブラケット治療が必要なくなることもあるのです。