先日、東京で国際舌側矯正歯科学会の大会が開催されました。この大会は、歯の裏側(舌側)に矯正装置を付けて治療を行っている矯正専門医が世界各国から参加し、さまざまなテーマについて報告するといったものです。その中で、イタリアから参加された矯正専門医は、20~30歳代の成人はもちろん、67歳の患者さんに対してもすばらしい治療を行っておりました。日本歯科医師会では、8020運動といって80歳で20本の歯を残せるように頑張っていますし、日本でも今後そういった成人矯正の比率が高くなると思います。
成人矯正では子供に行う矯正と比べて異なることがいくつかあります。第一は治療中における審美的要求が強いこと、すなわち目立つ矯正装置を嫌がる傾向が強いことです。そのため透明な装置や舌側矯正装置が必要とされてきました。日本舌側矯正歯科学会ができて11年ほど経つのですが、この10年で舌側からの治療技術の進歩は目を見張るものがあります。第二は歯周疾患の罹患率が高いこと、すなわち歯ぐきがはれたり、歯がぐらぐらする人が多いということです。これは歯並びが悪く歯をきれいに磨けないことが原因の場合もあります。重症の場合は、歯周病の専門医と相談しながら治療を進めることになります。第三は欠損歯やインプラントの歯があったり、歯に冠を被せている場合が多いことです。また、矯正治療に外科手術を併用することもあり、一般歯科医や口腔外科医などと連携を取りながら治療を行うことも少なくありません。